今までこの島でたくさんの野良猫を見てきた。東京や仙台、山形では滅多に見た事が無かった。
なのになぜこの島に来てからこんなに野良と逢ってしまうんだろう・・・・。
初めて拾った野良は病気でボロボロの状態だった。私は捕まえようと必死で追いかけ探し回ったが、
その日以来居なくなってしまった。「地域猫活動」なんて知りもしない五年前。まだまだ自分の事しか頭
に無かった日々。あの野良は多分生きては居ない。
不思議なことが起きたのもあの野良と接触した日の夜。
ククと出逢う前だったから、猫も飼っていない。。その夜、一匹の野良猫が私の部屋がある三階まで来て
た。「にゃーぅん」と鳴く声がして、ドアを開けたら生後三ヶ月ほどのトラ猫がいた。私はとりあえず
ツナ缶をあげた。美味しそうに食べていた。ふと、昼間の病気の野良を思い出した。私は自然に、
あのボロボロの野良が天使になった・・・と感じた。今まで一度も猫が来たことのないアパートに、
野良猫が来ている、この猫はきっとあの野良に導かれたんじゃないのかな。あのボロボロの野良が最期に
お腹いっぱい食べたかったから、このトラの身体を借りたのかな・・・・と自分なりに理解した。
そう理解したのは、トラ猫はあれから一度も来なかったからだ。
夏から秋に変わる季節に体験した不思議な出来事は、未だに心のポケットにしまいこんでいる・・。
もし、「地域猫活動」を知っていたら、あの野良の運命も変わっていたかもしれない・・・・・。